みしま・リスペクト⑤

素晴らしい人間を知れば知るほど自分の小ささが自分の中でクローズアップされて、いい結果が出る人と・結局あまり変り映えしない人と・良くない結果が出る人の3種類のタイプがあるように思うが、自分は50年人生に於いて数回出た(ような気がする)いい結果を除いてほぼ全般的に「結局変われない残念な人」だったように思う。自我が強いのか、それとも・・・・・

babaramamadhiババラ・バングーラを知るジェンベファンのほとんどはママディの初版教則DVDで初めて観た、あの「ヒュンヒュンキュラキュラッ!」と独特の鳴りをさせまくってるジェンベ音の人、、、とのたまうのではないだろうか?シディキカマラが大好きだった僕はDVD化により居なくなったシディキに代わって飄々と佇むババラに対してちょっと「よそ者」扱い視線で見始めたのだが、ママディに促されて少しハニカミながら叩き始めたババラのジェンベの音色に一気に引き込まれた。やけにリングの位置が高く、キュインキュインいう音色と皮の巻き込み具合から「3本リムやなぁ、きっと」と一瞬思った。そして何よりも「立ち姿が美しい」ことに驚いた。

数年前に来日した際に東京でワークがあったが、あいにく予定が合わずに私は行けなかったが、行った仲間から聞いた第一声は「凄い体育会系」だった。そして「絶対佐々木さんは気にいると思いますよ」とタクミから言われた。どういう意味だ?
babara1そんなババラ、今回のイベントでの立位置も「ファムドゥと一緒に来日した若き獅子」的な、まるでママディ教則DVDでの彼の位置と同じようなが最初の印象だった。実際フェリー乗り場に到着した際もファムドゥ達の後ろで大きな身体を少し屈めるように佇み、ファムドゥのクラスでもジェンベはほとんど叩かずにアンクルベルを太ももに載せてシャンシャン鳴らしたり、、、しかしそうして控えめにしようとすればするほど彼への興味が増大していく僕ら。

二日目の午後、ババラ最初のクラスはまこっちゃんとテント設営でワークに出れなかったが、その夜に僕らの「Djembe-Ber」で吞んでた皆が口々にウォームアップのことを話していた。前から聞いていたし、さして驚かなかったのと、自分の中で既にババラのそれは「自分に対して利く、足りないものを補完するもの」という確信があった。
そして翌日午後、そのときは訪れた。コノの美しいメロディーの唄を男女ハモって唄わせて、ソロケイタ&ママディコナテの迫力あるドゥンドゥンに合わせて片手づつのトンカン連打~限界までスピードを上げるショフマンを1時間目一杯、もう全身の筋肉と関節とスジが限界になるまで100名が叩いた。ジェンベを始めて20年、こんなに真っ白になるまで叩いたのは初めてだった。実際、途中でココロが何度か折れて連打のスピードが鈍った。しかし皆でジェンベを叩くところの「いい部分」は周りに乗せられるところで、また再度皆のペースに乗っかって連打しだす。今までは皆でジェンベを叩く「悪い部分」として自分ひとりくらい離脱してもアンサンブルにさして影響は無い、とたかを括ってしまうところで、自分は決して若くないのだから、こういった遮二無二なことはちょっと遠慮・・・と逃げ口上を打って出ていた。
カッコ悪かった。
しかし昨日感じていたババラのこれに対する「必要性」はやはり自分の第六感が正しかった。それはまず常々思っていた「どうしたら脱力した綺麗な音が出るのだろう?」の答え、そう昨日聴いたファムドゥのような音は「力んで力んで限界まで力むと崩壊して、不必要な力と動きをカラダが拒絶するようになる」という逆療法的発想だった。自然な動きは可動域を広げ、不自然な動きを本能的に阻止することでも可能にするのだと思った。これはスポーツで言うところの「超回復」とは少しニュアンスが違う。筋肉量が増すとかパワーアップするという質的要素よりもココロの反応だと思う。
考えてみればアフリカ人ドラマー達は決して習わず、見て聴いて感じて自然と身に着けていくのであろう。以前高木が言っていたがアフリカのジェンベの達人は例外なく「フォームが綺麗」であると。またフォームが綺麗なドラマーしか「残れない」と。とてつもないフォームで物凄い音を出す人も居るが、どこかで故障したり片寄りがあったりしていると。

ババラはソロも伴奏も意識的に左を多用していた。右利きの彼は、彼ほどの手慣れでも「左が苦手なので多く使うようにしています」と言っていた。
みしまの1週間、このウォームアップがどんどん苦無く出来るようになっていった。気のせいか音色も変わったような気がした。帰路の車内、眠気が限界に来たとき左手でトンカン繰り返して太もも叩いて目を覚ました。そして今日も・・・・。babara3

どうりでババラ。今回のとっても難しい立位置でも常に控えめで常に穏やかでそして常に明るく立ち振る舞っていた。難しい局面も多々あった。それをも超前向きに乗り切ったときのババラに涙した。絶え間ない努力とそれに伴う自信は「常にリスペクトする姿勢」を持てるババラを創り出していた。その中で主張もしっかりする。ババラのジェンベに対する姿勢はともすると真面目すぎるほど真面目だ。手を抜かない。伝統に対するリスペクトも半端じゃない。誰かをやっかんだり、攻撃に対して更に攻撃したりは決してしない、、、、
何だ!いい人過ぎてムカついてきた(笑)
でもババラQ&Aで見せた問題点をしっかり見据えている一面や、控えめでわきまえ過ぎてるところとか、いや、もっと駄目な部分を見せて欲しかった(笑)のは自分の願望です。実際はもっと硬軟バランス取れてる人だと思う。
世界中の要人にババラを見せてあげたい。

babara4最終日、フェリーでみしまを離れる甲板で最後まで島の皆さんに手を振っていたのはババラでした。